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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)928号 判決

原告(反訴被告―本文中では単に原告という) 深井信

右訴訟代理人弁護士 島田正雄

同 榎本武光

被告(反訴原告―本文中では単に被告という) 高橋文一

右訴訟代理人弁護士 稲沢清起智

同 稲沢宏一

主文

原告の本訴請求を棄却する。

原告は被告に対し、金五、四〇〇円を支払え。

被告のその余の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は、被告が反訴状に貼用した印紙額中三、一二〇円を被告の負担とし、その余の訴訟費用は全部原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

〔本訴請求関係〕

一  請求の趣旨

被告は原告に対し金七四二、五〇〇円およびこれに対する昭和四三年二月二三日から完済まで年六分の金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担。

仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

請求棄却、訴訟費用は原告の負担。

〔反訴請求関係〕

一  請求の趣旨

原告は被告に対し、金四一三、九〇〇円を支払え。

訴訟費用は原告の負担。

二  請求の趣旨に対する答弁

請求棄却、訴訟費用は被告の負担。

第二当事者の主張

〔本訴請求関係〕

一  請求原因

(一)1 原告は昭和四二年九月初旬頃、被告の注文により、東京都葛飾区亀有五丁目三九番三号地上に、木造瓦葺二階建建物一棟(二七坪五合)を、代金二、〇六二、五〇〇円で建築する工事を請け負った。

2 原告は同年一一月下旬頃右工事を完成して被告に引き渡した。本件請負契約によると、建物外壁はトタン張りとし、内壁はベニヤ張りとする約束であった。原告はこの約束どおり工事を完成したものである。本件建物の建設地が準防火地域に指定されていることは認めるが、本件請負契約の坪単価七五、〇〇〇円ではモルタルや漆喰塗工事はできるはずがない。また、本件建物の建築確認申請書には、外壁をモルタル塗とし、内壁を漆喰塗りとする旨記載されてはいるが、これは原告と被告との合意内容とは異なる。この申請は小菅茂に代願してもらったもので(原告には申請手続について資格がないため)、これは確認をとるためだけのものである。このようなことは世に広く行なわれている。それにもかかわらず、確認申請のとおりの工事をしなければならないとすれば、請負人は思わぬ損失を蒙り、注文主が不当な利益を受ける。さらに、被告は工事中も、引渡後もなんら異議を述べていない。いまさら確認申請どおりの工事を要求するのは禁反言の原則に反し、信義にも反する。

その他被告が未完成と主張する部分についての原告の主張は別表記載のとおりであり、またかりに被告の主張が認められるとしても、これらはいずれも工事の瑕疵にすぎず、工事未完成を理由に代金の支払を拒むことはできない。

(二)1 原告は同年一一月下旬頃、被告の注文により、右(一)の建物に隣接する既存建物の湯殿の内部模様替工事を代金二〇万円の約束で請け負った。

2 原告は右工事を九割方完成したが、右工事に附帯する排水溝工事を被告が他の業者に依頼してなす約束のところ、この工事が拙劣なため排水ができず、原告の工事は床のタイル張り工事を残して完成不能となった。これは被告の責による完成不能であるから、原告は完了部分の割合(九割)に応じた代金一八万円を求める権利がある。

(三) 原告は建築請負を業とする商人である(建築業者の登録こそ受けていないが、現に数十年にわたり請負を業としている)。

(四) よって被告に対し、(一)の請負代金中すでに支払を受けた一五〇万円を控除した五六二、五〇〇円、(二)の請負代金一八万円の合計七四二、五〇〇円と、これに対する昭和四三年二月二三日(訴状送達の翌日)以降完済まで年六分の遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因事実の認否

(一) 請求原因(一)1の事実は認める。同2の事実中工事の完成の点は否認する。別表記載のとおり(ただし番号①ないし⑪)工事は完成していない。

本件建物の建設された地域は準防火地域に指定されており、建物は防火造でなければならないから、少なくとも外壁はモルタル塗としなければならない。また内壁も漆喰塗とする約束であった。このことは、本件建物の建築確認申請によっても明らかである。また、請負人としては、注文主が用法に従って使用しうるような建物を建築する義務があり、建築基準法上適法な工事をし、建築主事から工事完了届に対する検査済証の交付を受けうるような建物を建築する義務があるというべきであるから、たとえ明示の約束はなくとも、確認申請どおり少なくとも外壁をモルタル塗とすべきである。原告がこの工事をしないため、被告はいまだに検査済証の交付を受けられない状況にある。このような状況からいって、工事は未完成というべきである。

(二) 請求原因(二)1の事実中湯殿の内部模様替工事を注文したことは認めるが、代金額は否認する。とくに定めなかった。同2の事実中排水溝工事は被告が他に依頼して工事をさせる約束であったことは認めるが、これが不備のため原告の工事が完成できなかったことは否認する。原告が難癖をつけたにすぎない。工事は未完成である。

(三) 請求原因(三)の事実は否認する。原告は建設業者としての登録を受けていない。

三  抗弁

(一) かりに本件請負契約が原告主張のように建物の外壁をトタン張りとする約束であったとすれば、建築基準法に違反する建築を目的とするものであり、公序良俗に反し無効である。建築基準法違反は、現今では単なる取締法違反というに止まらず、社会的な一般秩序に反すものといえる。

(二)1 本件建築工事には、別表①ないし⑪のような不備があり、また、湯殿内部の模様替工事も別表⑫のように未完成部分がある。これはいずれも原告の債務不履行か、そうでなくとも工事の瑕疵にあたる。

2 右の原告の債務不履行または工事の瑕疵により、被告は別表記載の各工事費用(工事を完成し、または修補するに要する費用)にあたる損害を受けた。

3 被告は昭和四三年九月一一日の本件口頭弁論期日において、右損害賠償債権をもって、原告の本訴請求金額と対当額で相殺する旨の意思表示をした。

四  抗弁事実の認否

(一) 抗弁(一)の主張は争う。請負契約において合意した以上、たとえ建築基準法に違反するものであっても、契約自体は有効である。

(二) 抗弁(二)1の工事の不備は否認する。その内容は別表記載のとおりである。同(二)2の損害額も否認する。⑫については、原告の請負っていない風呂の設備(ポリバス)の費用も含まれている。

〔反訴請求関係〕

一  請求原因

本訴抗弁(二)1、2に主張したとおり、被告は原告の請負契約の債務不履行もしくは工事の瑕疵により損害を受けた。よって、損害金合計九七六、四〇〇円のうち本訴において相殺に供した残額中四一三、九〇〇円の支払を求める。

二  請求原因事実の認否

本訴抗弁(二)1、2の認否と同じ。

第三証拠関係≪省略≫

理由

〔本訴請求について〕

一(一)  請求原因(一)1の事実は争いがない。

(二)  請求原因(一)2について判断する。

原告は本件建物は、外壁をトタン張りとし、内壁をベニヤ板張りとする約束であったと主張し、これを前提に昭和四二年一一月下旬に工事を完成したと主張するけれども、右の約束を認めることはできない。原告本人の供述は右主張にそうが、被告本人の供述に照らしてそのまま信用することはできず、しかも、右各供述とも本件請負契約が口頭でなされたとしているほか、建築仕様の詳細についての取り決めもなかったという。このような場合、請負契約の当事者は、少なくとも建築基準法に適合した建物を建築することを合意したと認めるのが合理的である。そして、本件建物の建設される地域が準防火地域に指定されていたことは争いがないから、少なくとも本件建物の外壁はモルタル塗としなければならないのであり、このことと≪証拠省略≫によると、本件建物の請負契約にあたっては、建物の外壁はモルタル塗とし、内壁は漆喰塗とする約束であったと認めるのが相当である。確かに、建築確認申請にあたって明らかにされる設計仕様が実際の契約内容と異なる場合があること、端的にいえば、建築基準法に違反する契約をしておきながら、虚偽の設計仕様を添付して確認申請をする例が、まことに遺憾ではあるが、世に少なくないことは、原告のいうとおりである。しかしながら、このような事態が本来是認されるべきでないのはもちろんであり、また、右のような例が少なくないからといって、確認申請にあたって明らかにされた設計仕様が当事者の契約内容を認定する資料となしえないことにはならないこともいうまでもない。本件においても、証人小菅茂の証言によると、建築確認申請にあたっては、同人が原告から代願を頼まれて、建築の概要をきいただけで、適当に設計図を作成したと認められるが、だからといって、これが本件建築仕様の拠りどころとならないわけではなく、原、被告間の契約が明確でない以上、また、反対の証明がない限り当事者間には少なくとも建築基準法に適合した建築をする旨の契約があったと推認すべきである以上、確認申請にあたって明らかにされた設計仕様は尊重されなければならず、結局これに明らかにされた基本的設計仕様が当事者の合意の内容を補充するものといわなければならない。

以上の認定を前提とすると、原告が建築請負契約を完成したとは認められない。この点に関し、請負契約の仕事の完成とは、いかなる程度をいうのか、ことに工事の瑕疵との区別について見解が岐れるところであるが、当裁判所は、建築請負契約の場合、建築された建物が社会通念上建物として完成されているかどうか、主要構造部分が約定どおり施工されているかどうかのほか、それが建築基準法上も適法として是認されるかどうかも含めて完成の有無を判断すべきものと解する(もっとも、建築基準法に反する契約内容が認められた場合は、この契約内容の充足程度が基準となるが、前認定のように、本件では契約内容が充たされていない場合であって、かつその点が建築基準法に違反する場合である)。このような観点に照らすと、本件建築が準防火地域にありながら、外壁がモルタル塗りとなっておらず、内壁もベニヤ板張りとしていることは、建築の重要な設計仕様に反するものであり、また建築基準法に違反するものであって、建築工事を完成したとはいえない、というべきである。

二(一)  請求原因(二)1の事実中、原告が湯殿の内部模様がえ工事を請け負ったことは争いがない。

(二)  しかしながら、右工事の代金が二〇万円と約束された点については、原告本人の供述すらあいまいであり(実は代金だけでなく、工事内容すらはっきりしない)、他に右代金を認める証拠がない。したがって、被告本人の供述するように、七万円程度であったと認める他はない。

(三)  請求原因(二)、2の事実中、原告が湯殿の床のタイル張り工事を残して、他の工事を完成したことは、原告本人の供述によって認められるけれども、残るタイル張り工事が被告の責に帰すべき事由により完成不能となったとの点は、認めることができない。原告本人の供述は被告本人の供述と対比してにわかに信用できない。そうすると、原告の工事は未完成というほかない。

三  以上判断のとおりであるから、原告が本件建物の建築工事の請負代金残額および湯殿の内部改装工事の請負代金の支払を求める本訴請求は、本来ならこの点ですでに理由がないというべきである。そして、被告が契約を解除しない以上、原告との請負契約はそのまま存続しているから、原告は前記認定による工事を完成して残代金の支払を求めうることになるはずである。しかし、本件では、被告は工事の完成を争いつつも、他方ではこの未完成(債務不履行)を理由とする損害賠償請求権を主張して抗弁とし、かつ反訴請求を提起している。このことは、注文主たる被告において工事の完了の割合に応じて代金債務がすでに生じていることを自認しつつ、同時に未完成部分についてはその不発生の確定を主張している趣旨と受け取るのが妥当であり、また、原告の残代金請求の主張は、工事が未完成であると認められる場合、完了割合に応じて、その支払を求める主張を含むものと解するのが妥当である。そして、このような場合、工事が完成していなくても、完了割合に応じて代金請求権は発生する代りに、未完了部分については代金債権は不発生と確定され、この段階で請負契約は終了して債権債務の関係が精算されるものと解すべきである(もっとも、この場合、未完成と瑕疵とは区別され、前判示のように、本件建物の外壁および内壁工事の未完了は、建物工事未完成の事由となるが、その余の被告主張の点は、工事の瑕疵として、把握すべきである)。そしてさらに、この完成割合は、結局未完成部分を完成させるに要する費用から逆算する(全代金額から完成に要する費用―瑕疵の修補にあたるものは含まない―を差し引く)方法によるほかない。ことに本件においては、前判示のとおり、それぞれの工事段階に対応する代金の合意も認定しえないような、きわめて大雑把な口頭契約だからである。

以上のように解することは、請負契約が継続的な契約関係ではないのに、継続的契約関係における解約と同様の効果を認めることになって、請負契約の性質に反するのではないかという疑問があるかもしれないが、ことに建築工事請負のように、一回限りの給付というには必ずしも妥当でないものがある場合には、ある程度段階的な給付を考慮し、この限度では継続的契約関係と同様の解釈を採り入れることは許されるというべきである。このような請負契約においても、常に売買契約と同様の意味での契約解除しかないとすれば、工事がある程度進行した段階で中止された場合、注文主において、残工事を他に請け負わせて工事を完成するのがむしろ両契約当事者にとっても、また社会経済的にも妥当であるのに、このような方法を選ぶことすらできないことになり、不合理である。たとえば双方合意のうえ、処理しうる場合はともかく、双方の合意が得られないような場合(本件のように)、注文主は請負人の不履行を理由に請負契約を解除することは可能であるとしても、これによって代金債務を免れるかわりに、それまでになされた工事の結果を利用することはできない理であり(原状回復により、すでになされた工事の結果を除去するということになるから)、これは、請負人にとって大きな打撃であるとともに、注文主にとっても決して利益ではなく、また社会経済的にも、無用な損失といわなければならない。以上要するに、建物建築請負契約のような類型では、契約の一部解除(工事未完了部分―瑕疵とはいえない本質的な未完成を生来させるものという意味で―に対応して)を認めるべきであるということになる。

四  以上のような解釈を前提とすると、被告の抗弁(二)は、相殺による代金債権の消滅という表現をとっているが、それが工事の未完成(請負人の債務不履行)を理由としうる限度では、前判示のような契約の一部解除をいう趣旨と解して受け取るべきであり、これを前提として以下に判断する(被告のいう相殺という表現を文字通りに受け取ると、代金全額が具体的に発生していることを前提とすることになり、この点ですでに工事未完成の主張と矛盾してしまう)。

(一)  本件請負契約が、建物外壁をモルタル塗とし、内壁を漆喰塗りとする約束であったことは、すでに認定したとおりであり、原告がこれを完了していないことは工事の未完成にあたることもすでに判断したとおりである。そこで、この工事を完了するに要する費用につき判断するに、≪証拠省略≫によると、外壁のモルタル塗の工費は三九三、二〇〇円、内壁を漆喰塗りとする工費は一四四、七〇〇円、合計五三七、九〇〇円となることが認められる(≪証拠省略≫によると、右見積は昭和四三年頃作成されたと認められ、本件請負契約による工事の紛争が生じた同四二年末と比較してとくに修正を要するほどの価格差があるとは認められない)。

右のほか、被告が工事の未完成と主張するものはいずれも、工事の瑕疵にすぎず、未完成として代金額自体を左右しうるものではない。

そうすると、本件建物の請負残代金は、被告の一部解除(昭和四三年九月一一日の本件口頭弁論期日に相殺の意思表示をしたことは記録上明らかであり、これは前記判示のとおり解除の意思表示の旨と解してよい。)により、原告が請求する残額五六二、五〇〇円(全部完成すればこの額となること争いがない)から、右五三七、九〇〇円を差し引いた二四、六〇〇円となる(これが原告の工事完了部分についての残代金である)。

(二)  次に湯殿の内部模様替工事について判断するに、これも工事が一部未完了であることはすでに判示したとおりであり、(一)と同様契約の一部解除が認められる。この未完了部分であるタイル張り工事の費用は、≪証拠省略≫によると、二七、〇〇〇円であると認められ、これをさきに認定した内部改装工事の代金七〇、〇〇〇円から控除すると、残代金は四三、〇〇〇円となる。なお、被告は、湯殿内部の改装工事未完了分の工事費用は一〇〇、〇〇〇円と主張するが、その根拠とする≪証拠省略≫には右認定のタイル工事以外の工費用も含まれており、これが右請負契約の内容となっていたかどうかは不明であるから、タイル工事以外の工事費用を未完成工事の費用とすることはできない。

(三)1  次に本件建物の工事の瑕疵による損害賠償請求権による相殺の主張につき判断する(前記未完成とはいえないもの。被告主張の別表③ないし⑪)。

被告主張のうち別表③、④、⑥、⑦、⑧については、≪証拠省略≫を総合すると、いずれも被告主張のとおりの瑕疵があったことが認められる。≪証拠判断省略≫

そして、≪証拠省略≫によると、瑕疵の補修に要する費用は別表③については一、〇〇〇円程度、同④については一〇、〇〇〇円を下らないと認められ、≪証拠省略≫によると同⑥については二〇、〇〇〇円、同⑦については一二、〇〇〇円の補修費用を要することが認められる。同⑧については、工事費用は必ずしもはっきりしないが、≪証拠省略≫を総合すると、少なくとも被告主張の三〇、〇〇〇円を下ることはないと認められる。以上の補修工事費用の合計は七三、〇〇〇円となり、これが工事の瑕疵による損害といえる。

被告主張のうち、別表⑤については、原告本人の供述するように、シャッター上部巻揚部分の覆いは被告が看板を掲げるために被告の指示で工事から除外した可能性があり、同⑨ないし⑪は、いずれも本件請負契約の約束工事の内に含まれていたかどうかはっきりせず(被告本人の供述もそのまま全部信用することはできない。ことに、(10)の内部塗装は、内壁を漆喰塗とすることと重複する可能性があり、独立した瑕疵とすることはできない)、結局工事の瑕疵と認めるに証明が十分でない。また、被告主張の別表⑬の諸経費は、≪証拠省略≫によっても算出方法にかなりの巾があることが認められ、必ずしも正確に算定することはできないうえ、被告主張の工事費用のうちには前記のように認定できないものもあるので、被告の主張する工事の瑕疵等がすべて認定されることを前提とした被告の諸経費の主張額をそのまま採用することはできないといわなければならない。このような点と、さきに認定した未完成部分ないし瑕疵修補の工事費用額が、本件建物請負契約による建築時期より若干後の昭和四三年頃の見積であって、とくに修正を要するほどの値上りは認められないとはいっても、ある程度の誤差(値上りのための)は避けられない点を考慮すると、別表⑬の諸経費をとくにとりあげて損害額に加えるのは妥当でないと考えられる。

2  被告が昭和四三年九月一一日に相殺の意思表示をしたことは記録上明らかである。

(四)  以上によると、原告の請負代金として請求しうる残額は、本件建築工事に関して二四、六〇〇円、湯殿の内部模様替工事につき四三、〇〇〇円の合計六七、六〇〇円であったから、被告の右相殺により原告の請求できる残額はなく、本訴請求は理由がないことになる。

五  以上判断のとおりであるから、本訴請求は理由がなく、棄却を免れない。

〔反訴請求について〕

本訴請求について判断したところによると、被告の損害賠償請求権中相殺に供した残額は、損害賠償債権七三、〇〇〇円から請負代金残額合計六七、六〇〇円を差し引いた五、四〇〇円となるから、反訴請求はこの限度で正当として認容し、これを超える部分は失当として棄却を免れない。

(裁判官 上谷清)

〈以下省略〉

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